自由はわたしの中に

幻影は、私の脳に働きかける。
「お前に自由はない、なんでも報告!なんでも相談!すぐに連絡!それが当たり前だろう?お前に意思など無い。」
かつてのわたしは、どろどろに塗れていく。

深呼吸して、風を吹き込む。
「わたしはここにいる!」
心の中で、力いっぱい叫んだ。
泉を守る木々がざわめいて、幻影は弱々しい声をあげながら姿を消した。
かつてのわたしを覆うどろどろは、雪解けのごとく消えた。
あたたかな泉の風景が戻ってきた。

私は崩れるようにして座り込む。
日だまりのぬくもりをたたえた草花が包み込んでくれる。
みんながそこにいてくれて、「よくがんばったね。」と私はわたしに声を掛けた。

空は夕暮れの淡い橙色と夜へ向かう水色に深い青色が混ざり合って、金星が輝いていた。
みんなで焚き火を囲んで、こっくりとしたポタージュとカリカリのトーストを頬張る。
「みんなで食べたらおいしいね。」
心がほどけ、顔がほころんで、穏やかな笑みが広がる。

私が奪われた自由は、どんなにお金があっても返ってこない。
お金と自由は、切り離されている。
自由は、わたしの中にある。

わたしはもう、わたしに還ることができる。
何度も繰り返し経験して、新しい無意識を作っていくんだ